5月26日,フェアトレードショップ「アジール」のバス遠足に参加した.今回の研修先は福井県,楽しく遊んで,交流を深めながら勉強もしようという硬くて柔らかいユニークな遠足だ.

IMG_0409s朝7時集合で一路福井県若狭町,三方五湖レインボーラインへ,リフトに乗って山頂に到着.2005年にラムサール条約に登録された5つの湖の景観はなかなかのものだ.縄文時代にも淡水湖として存在し,周辺に縄文人の生活の跡が残されているが,数千年前のこの地を想像し,人間の短くも貴重な命と大自然の時間の経過に不思議な感覚におそわれた.

バスの中では,元北陸大学の田村先生の講義が行われた.糞石(うんこの化石)の研究者千浦美智子さんのお話である.三方湖の縁島浜貝塚から出土した糞石を分析し,そこに含まれる花粉や種子から縄文人の食生活の姿を描き出す研究で,35歳で夭折するこの研究者の探究心の深さと,「フミクソ」や「ヤケクソ」等の命名に見るユーモアセンスの良さなど興味深い勉強タイムだった.

南条SAで買った鯖寿司と越前そばの昼食をとって,次は若狭三方縄文博物館.埋没林の縄文時代の杉の根や,土中から出た丸太を繰IMG_0415sり抜いた木の船とその復元実験,そして糞石などの展示を見学した.昨年リニューアルされた博物館は,わかりやすく,展示物も充実した施設であった.

美浜原発s

バスの中から美浜原発,「もんじゅ」を見ながら,次の目的地,関西電力の美浜原子力PRセンターに到着した.3つの原子炉を持つ美浜原発,1号機は1970年に運転開始,すでに40年を超える老朽原発である.91年には2号機で蒸気発生器細管破断事故,2004年には3号機で二次系配管破断事故を起こし,死者も出ている.これまで450万人の入場者を数えるこのPR館であるが,その名の通り原発をPRする施設である.説明する親切な若い女性職員は現地採用だろう.地域の雇用経済が原発マネーで支えられている現実と,脱原発から新しい地域づくりを考えるとき,様々な乗り越えるべき課題の多さを想像してしまうが,これはやらなければならない.

IMG_0426sさて,次は今回の遠足のメイン,明通寺と住職の中嶌哲演さんのお話である.本堂と三重塔が国宝に指定されている若狭の古刹である.静かに堂々と立つこの真言宗の寺は,今回はじめて訪れたのだが,落ち着いて心休まる場所であった.住職の中嶌哲演さんは,学生時代から広島原爆被爆者の支援に携わり,小浜での原発建設計画に反対し市民運動を立ち上げ,反原発運動を牽引してこられた.昨年の大飯原発再稼働の動きに反対し,ハンガーストライキも実行している.
中嶌さんは,原発には地元が3つあると指摘する.立地地元,被害地元,消費地元の3つである.このそれぞれの地元住民はそれぞれ原発を自分の問題として考えなければならない.ふるさとの自然・海を守り,穏やかに暮らしたいという人々と,地域振興という名の原発マネーの依存から抜け出せない人々の対立がこれまでの原発の議論の中心であったが,福島第一原発事故は,立地自治体だけではなく,原発マネーも落ちないが被害地域にはなりうる「地元」になった.そして,地方の過疎地に原発を動かすことによって大量の電力を消費している都市住民はその地方への負担の責任を負わなければならないという問題を突きつけた.多くの火力発電所は,太平洋岸大都市地域で稼働しているのである.どうして原発は田舎に立てるのかということである.IMG_0421s
原発依存から脱していくためには,動かし続けて利権を得続けたい側の巧妙な嘘の情報や宣伝と闘わなければならない.経済性や,安定供給,電力不足などの脅しである.中嶌さんの宗教者としての哲学の上に立つ反原発の思想は,このような多くの嘘情報に論理的に反論できる知識とデータに裏打ちされていると強く感じた.騙されない学習と,将来世代への責任の重さを痛感した.

現地での運動成果と哲学を盛り込んだ多くの資料をいただき,北陸石川からの脱原発を決意してお別れした.

この盛りだくさんの研修旅行の最後は,熊川宿である.若狭から京都に至る「鯖街道」沿いの宿場町だ.国の,重要伝統的建造物保存地区に指定されている.この日はこの地が自転車のロードレスのコースにもなっていたようで,日中は賑わっていたようだった.私たちが訪れた夕方は,観光客もほとんどおらずひっそり,鯖寿司も売り切れ御免の状態だった.この宿は,テレビの「サザエさん」のオープニングでも紹介されている観光地だそうだが,初めての訪問だった.なんだか,古い風情がいいなあという歳になったということもあるだろうが,年齢問わずそんな価値観も広がってきてるようである.

バスの中でも,Nさん,Sさんのトーク炸裂,寝るまもなく,見学地の多さ,内容の濃さ,深さ,すべてにおいて充実したバス旅行となった.お世話いただいたアジールの中谷さんはじめスタッフの方々に深く深く感謝したい.またの企画に期待!