■日程と調査地・施設
2019年10月6日
・小松空港から羽田空港、成田空港からイギリス・ヒースロー空港を経由
デンマーク・コペンハーゲン空港に到着
10月7日
・ツムラーレ コペンハーゲン支店(JTB関連旅行代理店)
・コペンハーゲンビジターセンター(市観光案内所)
10月8日
・ロラン島 ロラン市へ
・森の幼稚園
・フォルケ・ホイスコーレ(小中一貫公立学校)
・ヴィジュアル気候センター(地球環境学習施設)
10月9日
・洋上風力発電所
・大型風力発電施設
・リサイクルセンター
・デンマーク・コペンハーゲン空港からスウェーデン・アーランダ空港へ
10月10日
・在スウェーデン日本国大使館(スウェーデンの概要レクチャー)
・リーディングオーデイケアセンター(高齢者デイ・ケア・アクティビティセンター)
10月11日
・オプティマス、ハンデルセリーケット(障害者アクティビティーセンター)
・MISA(障害者雇用支援事業所)
10月12日
・日本の台風12号の影響により国際線運休となりロンドン泊
10月13日~14日
・イギリス・ヒースロー空港から羽田空港経由で小松空港へ
■調査施設の概要と所感
はじめに
県議会の海外行政調査には、4年任期中にほぼ1回程度参加してきた。これまでは、イタリアの農業や観光、スローライフなどのとりくみ、急速に成長しつつあるインドのIT事情や教育施策、東アジアの各国と石川県との経済・観光交流促進に向けた現地企業や機関関係者との意見交換など、有意義な研修を行うことができた。議会においても、これらの調査をもとに、地域の活性化や、持続可能な地域づくりなどの県政課題について多角的に提案等を行ってきたつもりである。
今回訪問したデンマーク、スウェーデンは、2004年に社民党の調査団の一員として参加し、個人の尊厳を大切にしながら、多様な人々の連帯によって高福祉を実現している政治や市民の姿に感銘を覚えた。あれから16年が経過し、これらの国が現在どのように変化、進化しているのか、現地で学びたいと考えたのが参加の動機である。日本では政府による「全世代型社会保障」がうたわれている今日、看板だけではない本来の教育・福祉施策実現において議会海外調査検討会提案の今回の海外調査はタイムリーなものであり、内容も意義ある研修となった。
以下、その内容について報告する。
*デンマーク
コペンハーゲン
■ ツムラーレ コペンハーゲン支店 |
対応:ジョン・ブロック・ガートマン(支店長)、シギー・ルヴィセンと池田彩子(ジャパンスペシャリスト)
ツムラーレはJTBヨーロッパの一部として、デンマークと日本の間のインバウンド、アウトバウンド客のための業務を行っている。インバウンドの課題として観光客の有名な観光地(たとえば人魚の像など)への集中による混雑やコペンハーゲンのホテル不足など、特定地域でのオーバーツーリズムが発生している状況があり、これを緩和し他の地域や場所の知名度を上げて拡散・誘導することにチャレンジしているということであった。
日本への観光についても、人気は東京-大阪、東京-京都というようなゴールデンルートになっている。このルートに石川や金沢を組み込んでいくことも一つの戦略として考えていて、具体的には毎年設定している桜のツアーと紅葉のツアーに金沢を組み込んでいく予定とのことだった。また、レンタカーを利用しての能登観光も企画販売することも考えているとの説明があった。
まだ知名度が低い地域の宣伝などについてはSNSや口コミが重要である。JTBや阪急など日本の旅行社に地域の紹介をして体験をしてもらいこれを発信してもらうとりくみも行っているということであった。
このような状況は石川県とも共通するものがあり、県としても同様のとりくみを進めているわけであるが、やはりまだ東京への集中、県としては金沢への集中という段階にあるのではないかと思う。今後、能登や加賀のゆったりくつろげる温泉や自然、農業体験、などの宣伝を強化し、デンマークに存在する「ヒュッケ」という、心地よくほっこりする感覚を表現する言葉にある価値観に訴えるようなとりくみが必要ではないかと感じた。また、今回初めて聞いたことであるが、地球温暖化の観点において飛行機による長い距離の移動による環境負荷を減らそうという考え方で海外旅行が減少する傾向(たとえば7月のスウェーデンの外国旅行者7%減)が現れているという情報も得た。現在、日本ではヨーロッパからのインバウンド客は増加をしているが、持続可能な開発目標SDGsも念頭に置きながらツーリズムと環境についても考えていく必要があると感じた。
■ コペンハーゲンビジターセンター |
コペンハーゲンの観光組織としてPRを受け持っているのが、ワンダフルコペンハーゲンとここビジターセンターで、観光客の受付・案内の対応をする部署である。国際会議や大型船の船客から個人観光客まで年間約50万人がここを訪れる。キーポイントとして5つ、①ガストロノミー(グルメ)、②歴史、③建築物、④多様性、⑤持続可能性 の視点で観光客のニーズに応えて市の観光へと誘導しているということであった。センターは中心突き当たり中央に案内カウンター、脇にはペッパー(ロボット)を置き、来館者の相談などがしやすい雰囲気をつくっているようであった。また、館内のレイアウトは前述の5つのポイントに従ってコーナーを設け、パンフレットや映像、展示物が配置されていて、案内パンフレット(カードやリーフレット)等はQRコードによってYou Tubeにリンクさせ映像の案内を見ることができたり、目的地をVR体験できるコーナーもあったりと様々な工夫がされていた。
キーポイントにそった観光地として、持続可能性では、火力発電所とゴミ焼却場に緑の壁、スキー場が一体化した複合施設の紹介があった。年間40万トンのゴミを燃やし、16万世帯に温水、6万世帯に電気を供給し85mの世界一のクライミングウォール、年中使える600mのスキー場が一体化した施設で市民の憩いの場にもなっているという。人魚の像がある河畔からこの発電所を見ることができる。見せるための施設ということではなく、持続可能なまちづくりのとりくみを見学、体験施設として紹介するという観光ということになろう。また、コンセプトは変化してきていて、そこに住んでいるローカルの人のように過ごす、たとえば一緒に日光浴をするとか、その地の人が好きなお店に食べに行くとか、ローカル風に過ごす、楽しむという方向にも注目していきたいと言うことであった。
案内は英語中心に行われていると言うことで、多言語の対応と言うことではなかった。ヨーロッパにおいてはこれで大きな不都合は無いようである。今後、スマートフォンやアプリケーションの進化は、コミュニケーションの上で言語違いの障壁を低くしていくことは間違いないだろう。このような課題よりも、やはり、物から事、見るだけから体験・学び、多様な価値観に触れることなどがこれからの観光振興にとってポイントになるということを再確認させられた。
ロラン島 ロラン市(デンマーク) |
ロラン島の各施設は、島在住の北村朋子さんの案内と通訳で説明があり、調査は大変興味深く充実したものになった。事前に北村さんの著書(ロラン島のエコ・チャレンジ:野草社)を読み、この島がめざしている環境や経済、エネルギー、教育や福祉の持続可能なとりくみを現地で体験できることを楽しみにしていたが、期待に応える研修となった。
ロラン島は2つの自治体でできていて、ロラン市は島の西側2/3を占めている。人口はロラン市が42,000人、島全体では60,000人の人口である。主な産業は農業で1農家あたりの耕作面積は100haでデンマーク全体の平均80haを超えている。風力発電を中心に再生可能エネルギー関連産業も重要な産業となっている。日本の三菱重工とデンマークの世界最大の風力発電施設会社のヴェスタの合弁会社によるロラン島のブレード工場は3,000人の雇用がある。元々栄えた造船業は80年代にロシアなどにシェアを奪われ衰退し、多くの造船所が閉鎖された。高い失業率の10数年後新市長のもとクリーンエネルギーに注目し先進的な自治体となっている。
移動のバスからは甜菜(てんさい)の畑が広がり、農地に立つ大風車も見えた。自然に恵まれた落ち着いた景観は都市部との違いを見せ、住みたくなるようなところであった。
■ 森の幼稚園 |
対応:カーン・ムラ園長
訪問の日はあいにくの雨模様、こんな日に森の幼稚園はどんな活動をしているのだろう、晴れた日に日頃の活動が見られるのではと残念な思いを持っていたが、何と自分の常識にとらわれていた。雨の中で子どもたちは雨具をつけて外で楽しそうに泥遊びをしていた。我々は、この施設にある2つのテントのうちの一つに案内され説明を受けた。雨でやや薄暗いテントの中には薪が焚かれ、これを囲んで立って暖かい火にあたりながら話を聞いた。
この「森の幼稚園」は10年前に認可を受けた私立の幼稚園である。園児40人に資格を持った保育士が7人、調理師1人と複数の実習生がいる、実習期間は3か月と長い。ロラン市にはもう一つ27年経つ森の幼稚園がある。ガイドの北村さんはここに自分のお子さんを入れたいとロラン島に移住してきたそうだが、年齢の関係で入れないことがわかり、同じ状況の親御さんたちと共にもう一つのこの森の幼稚園をつくったのだそうだ。
デンマークの幼稚園、特に森の幼稚園で重視しているのは、遊びから学ぶということである。子どもは遊びに集中し、そこから様々なことを学んでいく。保育士は大きな事故がないようにこれを見守り、遊びからの学びをサポートするという考え方だ。子ども同士の喧嘩は見守る。人生であることだから自分たちで解決をめざす。遊びの中で自分の限界を知り、自分の学ぶテンポを知り、自分は自分でいいのだ、自分の目標に自分のやり方とテンポでアプローチすることを遊びの中から学んでいる。遊びの中で危険を自分で知っていく。小さな怪我はつきもので普通にあるが、27年間救急車を呼ぶような事故は一度も起こっていないそうだ。子どもが守るべきことは、丸太を超えてその先には行かない、溝の中で遊ばない(水が流れ溺れないよう)、ホーッというインディアンのような声が聞こえたらすぐ集まる、この3つである。遊びの範囲は1ha程度で周囲には網が張られている。これは子どもが出て行かないためというよりは、動物が侵入しないためということのようだ。
子どもたちの活動場所は森の中と2つのテント、昼寝のための屋外のシェルター(扉はなく木製の棚のような場所)である。屋外では歩き回ったり、溝を跳び越えたり、丸太の橋を渡ったり、木や土や石などを使って思い思いに遊んでいる。テントの中では、木の実で何かを作ったり、ブロック遊びをしている子どももいた。テントに掛かっていた4枚のカードには、Mod(思いやり)、Omsorg(ケア)、Tlerance(寛容)、Respekt(敬意)と書かれていた。互いの多様性を認め、優しく、たくましく、自分で考えて判断する子どもたちが育っているようだ。読み書き計算は基本的には学校に入ってからである。
日本においても自然体験や遊びから学ぶ保育や幼児教育も注目され、行われている。幼児期の行き過ぎた保護や、価値観のすりこみ、体育や知識の教え込みにやや偏っている保育、幼児教育にも問題提起が行われている。
見守る保育士の働き方は、週37時間で賃金は初任でも50万円程度、税金は高く手取りは半分になるというが待遇は悪くない、また、様々な報告書類の作成など持ち帰りの仕事はほとんどないという。人間を育てる仕事は人間的でなければならない。日本の保育士の労働条件の改善は急務である。
人なつっこく近寄ってくる子どもたちとつかの間の交流をし、一緒に写真に収まり園を後にした。
■ フォルケ・ホイスコーレ(小中一貫公立学校 |
対応:タリル先生、学習アドバイザー
デンマークでは2005年に教育改革があり、「子どもの幸せなくして学びなし」という考え方のもと、学校での楽しさ、生活の楽しさ、子どもの幸せを最重要視して教育が進められている。同じ学級にいても一人ひとりの学習プログラムが異なっている。人によって違うことを学ぶことが普通に行われている。コンピュータは1年生から全員に渡され、4年生から課題の提出はワード、パワーポイント、エクセルで行われている。グループワークを重視していて、社会に出たときいろいろな人と組んで一人ひとりの力を総合してプロジェクトを達成する能力をつけようとしている。
訪れた学校は0年生から9年生までの380人の子どもが通っている一般的な公立学校である。1学級の定員は上限28人で、ほぼ20人程度の学級になっている。この学校でも4,5人のグループでの学習で全員が能力を発揮して協力することを重視している。インクルーシブ教育を進めていて、障害のある子どもが各学級に在籍している。一人ひとりの子どものニーズに合わせた教育を行うため支援の教員を専門職として配置している。現在、特別支援学校に通っていた子どもが普通学校に入ってくるように変わってきていて、その受け入れ体制の準備を行っているところだということだった。
学習アドバイザーを務めるタリル先生が述べた教育理念はデンマークの教育に共通している哲学であろう。残念ながら今の日本の教育に足りないものが多くあるように思った。何点かこれを紹介しておきたい。
優秀さを競う教育は1700年代までである。1844年フォルケフォイスコーレをつくり民主主義の発展を教育に託した。民主主義の中で国民一人ひとりが自分の能力を最大限に発揮して活躍することが大事で、競争はその概念から外れる。
国として最大の資源は国民である。国民の頭脳を活性化させてたくさんの人と事業に関われる環境をつくることが国の持続可能性につながる。教育にはたくさんのお金をかけたい。教育にお金をかけることが未来のデンマークをよりよくする。
イノベーションの国として新しいことに順応し、適応できる能力を大事にする。国が小さく、いろいろな国と対話をしていかねばならないので語学教育にも力を入れている。
世界の中で発言力とプレゼンスを保っていくには、ヒエラルキーを気にしていては難しい。中で競っていても仕方ないからヒエラルキーを少なくして、たくさんの意見を吸い上げて、国の方向をどうまとめていくかに力を使いたい。そのためにフランクな社会構造をつくっている。
何と示唆に富んだ主張だろう。あらためて訴えたい。教育への公財政支出が低い日本、競争によって能力が高まるとの幻想の中にいる日本。ヒエラルキーに縛られ自由な発想の集積と民主的な手続きが軽視される忖度社会となった日本、教育行政の責任は重い。デンマークの教育に学べば日本の持続可能性も高まっていくと確信する。
■ ヴィジュアル気候センター |
対応:レオ・クリステンセン ロラン市議会議員
レオ市会議員は以前ユトランド半島の大手オイル会社の事業部長であった。造船業の衰退で厳しい状態にあったロラン島再生に立ち上がった市長(当時は島に7つの自治体があり、その中の一つの市の市長)が世界で活躍するロラン島出身者に助けを求め、呼び寄せた中の一人である。レオ市議の極めてわかりやすく説得力のある講義で地球温暖化の現状を学び、その後、ロラン島のエネルギー政策と地域再生のとりくみについて説明を受けた。氏は自ら65歳を超えた年金受給者(ヨーロッパでは通常仕事を持ちながら市議会議員を務め、議員報酬は低い)であると謙遜していたが、専門的知識が豊富で理論と実践が伴った実力のある尊敬すべき議員だった。
この施設は、環境教育、特に地球温暖化の現状と課題を学ぶ場となっている。センターは球形のスクリーンに地図やデータ、図表などを投影する大型地球儀が設置された学習室と、そこを出て会議や集会ができる広いフロアが設けられている。この地球儀に投影される映像はNASAからデータの供給を受けて作成されたプログラムで、このシステムは世界の151施設に設置されている。日本には2か所あるそうだ。
この地球儀をもとにした充実した興味深い講義の詳細な内容は割愛するが、地球上の大気の循環、海流の状況と海水温、局地の氷の状況、平均気温の変化、干ばつの実態、台風、ハリケーン、地震・津波のデータ、生物の分布などをもとに地球温暖化が確実に進んでいることをヴィジュアルに示しながらの説明だった。ここに学習に訪れる子どもや市民が実感をもって温暖化の危機を確認できるであろう。
2015年に東京都の環境委員会がここを訪問したとき、東京オリンピック開催決定時に亜熱帯の気候帯に入っていたが、2020年には熱帯に入るが、対策はしているのかと、レオ氏は質問をしたそうだ。そのことを知らなかった東京都の訪問団は静まりかえったそうだ。さて、その後対策は十分行われたのかどうか、マラソンと競歩の会場をめぐる騒ぎは日本的な無責任体質を露呈したようにも感じる。余談である。
2011年3.11の津波の状況、福島第一原発事故の放射性物質の拡散の状況も投影され、3度の爆発、風向きの変化と拡散した物質の種類と範囲、濃度などがCG動画で示された。原発事故の深刻さをここでも感じることができた。デンマークは10年にわたる国民的議論で原発を導入しなかった国である。前述のデンマークの教育と民主主義を思い起こすのだが、真実を公開し現実と向き合い、深い思考と徹底した議論を行ったならば、今の日本の原発再稼働の政策はないのではないかと思う。日本と石川県のエネルギー政策を考える上でも大きな材料を提供していただいた。
レオ市議との意見交換では、ロランの衰退と再生の経緯やエネルギー生産による地方の活性化について詳しく聞くことができた。
ロラン島には450機の大型風車が回っていて、100ha規模の太陽光発電パークがつくられ、世界でも人口1人あたりのグリーンエネルギーの生産量が一番多いエリアになっている。かつては重工業で栄えていたがオイルショックで造船業が衰退し、企業の集約化が進み小さな町の小さな企業はつぶれていった経験をしている。一時失業率はデンマークで最悪となって、国から多くの補助金や支援金が出ていた。補助金にたよる自治体からは若い人が出ていき高齢者が残り活性化は困難となった。そこで、新市長と呼びかけに応じたレオ氏らによるロラン再生のとりくみが開始された。閉鎖造船所の買い取りと大学との連携による企業誘致、その成功で雇用が拡大し消費が進み、物の買い換えで廃棄物が出たためリサイクルセンターを整備した。消費の主導権は女性で家具やキッチンの買い換えが進んだ。リサイクルセンターを見れば生活がわかり、政治の影響がわかる。リサイクルは子どもに学ばせる、そうすれば家庭に伝わる。宿題にすれば家族がセンターにやってくる。現在廃棄物の4.5%が埋め立て、9%を焼却し電気と熱を供給している、残りはリサイクルでその率は高い。熱供給をするためにゴミを輸入するくらいリサイクルは進んでいる。廃棄物処理業者がグレーな時期があったが、透明性を増すシステムにしてグレーな業者の介入を困難にした。
デンマークは2050年までに完全に化石燃料から脱却するという政策を出している。ロラン島は多くの電力を生産しているがこれを流すためのグリッドが必要になってくる。経費も掛かるので近いところに企業が集まってきている。現在、島の再エネ自給率は800%で農業生産に匹敵する。デンマークでは農地に風車を建てることができるので、自分で投資して風車を持って売電したり、土地を風車所有者に長期契約で貸して土地代収入を得ることができる。この収入は農業の基盤を強化し、補助金に頼らない強い農業経営も可能になる。企業誘致は企業が撤退することもあるが、農業は大きな経済基盤である。市民の農業についての認識は日本はまだ古いままのように感じる。農業と再生可能エネルギーは地方から進む、首都機能の移転も進め地方の人口減少は減速してきている。大学との連携によって地域のポテンシャルを調査し、その土地の価値を有効に活用することを薦める。石川県は長い海岸線を持っているから海のポテンシャルを活かすことができる。世界的人口増のこれからには食料が必要になるから、海と陸でプロテイン生産ができる能力がある。など、様々な視点からの分析と提案もあった。日本での実現は困難な面もあるが、少なくとも食糧自給率を下げるような日本の農業政策、経済外交の姿はその逆をいっているのではないかと不安を感じざるを得ない。
都市と地方の関係については、持続可能であるためには信頼と対等な関係が必要であるという。都市が必要とする食料やエネルギーは地方が供給している。都市は安いところからこれらを買っていたがそれでいいのかという考え方になってきている。経済の変化があっても物が手に入ることが都市の持続可能性の条件となるから、信頼できる関係自治体を持つことが大事になってくる。ロラン市とコペンハーゲンは協定を結んでいる。食料、エネルギーの供給と都市住民の再教育や地方への投資など対等な関係が確立していけば互いの持続可能性が実現するというのである。日本においてはそのような関係にはまだなっていないと思うが、これから重要な視点となってくるであろう。3大都市圏と石川県の関係、金沢と能登・加賀の関係についてもこのような視点で、持続可能性について考えてみたい。大変新鮮で参考になる講義であった。